竜王様のお約束
「あっ、勝手に入ってごめんなさい。
私の話をしていたみたいだったから。」
チロっと可愛らしい舌を出し、ヤヨイを思わせるひまわりのような笑顔を見せるリョクは、部屋の雰囲気をものの見事に和ませてくれた。
「まぁ!」
扉のすぐ脇に控えていたイオリが、リョクを見て驚きの声をあげる。
「お目にかかるのは、リョク様がお生まれになって以来でございます。
こんなに大きくなられて・・・。
ヤヨイ様にもハクリュウ様にも、よく似ておられますこと。」
日本人形を思わせる顔立ちに、赤茶色の髪をした女性を、リョクは知らない。知らないと言うか、覚えていない。それもそのはず、ヤヨイの出産の時にイオリが立ち会ったという、一方的なものなのだから。
それ以来、コウリュウはちょくちょく人間界にくだり、ハクリュウ一家に会ってはいたが、それだってリョクが3歳までの話だ。
「リョク、何ゆえに天界へと参った。
コクリュウに託けた言葉を、聞かなんだのか?
留守番せよと、申し付けたはずぞ。」
「陛下・・・いえ、ハクリュウ様・・・それは・・・」
慌てて口を挟んだのは、コクリュウであった。