竜王様のお約束
ひたすらにひれ伏すコクリュウは、ハクリュウの失笑を受けて尚、詫びる以外に方法が思い浮かばない。


竜王を断るという、ハクリュウの期待に応えられない無礼を、コクリュウは心の底から耐え難く思うのだが、おいそれと従うわけにはいかないのである。


それもそのはず。


『俺が竜王になんて、なっていいはずがない。
だって、竜王だぞ?
天界を背負って立つことなんか、俺にはできない。』


キリュウのように野心に溢れ自信満々の人物であれば、願ってもない勅命なのであろうが、ハクリュウが声をかけた相手はコクリュウだ。自分の身の丈を知り、分をわきまえ、天界王家に忠実な臣下たらんと、その身を捧げてきた人物である。


「コクリュウよ。真面目に考えすぎるでない。」


「いえ・・・、お言葉ですがハクリュウ様。
私にとって、今ほど真面目で慎重になるべき場面は他にございません。」


「ははっ・・・。
上手いことを言う。」


「恐れながら、お笑いになるような事を申したつもりはないのですが・・・。」


「ふっ・・・確かにな。」


真剣そのものの真っ直ぐなコクリュウの瞳に見据えられ、ハクリュウは僅かに肩を上下させた。


「コウリュウが竜王でいられない今となっては、コクリュウ、そなたが天界で唯一竜王になれる男だ。
この意味、そなたにも理解できよう?」


自分を見つめるコクリュウに向かい、ハクリュウは諭すかのような口調で言い切った。
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