竜王様のお約束
ジュウク
どっしりとした存在感のある黒い屋敷の玄関から中に入り、左側の重厚な扉を開けると、いつもの見慣れた寛ぎの空間は無残な形で吹き飛んでいた。


承知してはいたものの、しばらく呆然と立ちすくんでしまったコクリュウはその光景を目の当たりにして、ガックリと肩を落とす。
自分の隣に寄り添う小さな姫君の気持ちを汲む余裕が、今のコクリュウにはなかったのであろう。
あからさまに落胆してしまった。


「コクリュウ、ごめんなさい。
お家・・・壊しちゃって。」


その小さな呟きにハッとして、コクリュウは我に返った。


「あっ、いえ、その・・・。
申し訳ございません、私としたことが。
なに・・・屋敷が少しばかり壊れただけの話です。
それに元はと言えば、私の浅はかさが招いた結果。
リョク様が気に病む必要などないのですからね。」


慌てて取り繕うコクリュウに、リョクは悲しい顔をして見せた。


「リョク様。
ほら、そんな顔をなさらないでください。
リョク様はこれっぽっちも悪くありません。
ひまわりのような、あの朗らかな笑顔があなた様にはお似合いですよ。
後は私にお任せ下さい。」


腰をかがめてリョクと目線を合わせ悟すようにコクリュウが言うと、リョクは両眉をつり上げてプイとそっぽを向いてしまった。
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