竜王様のお約束
なぜリョクが急に機嫌を損ねたのかと、コクリュウが小首を傾げる。


「リョク様?」


そんな仕草にリョクは更にぷりぷりと言い返した。


「もう、子供扱いしないでよ。
私はコクリュウの妻になるんだからね。
コクリュウとは対等でいたいの。
私だって役に立ちたい。」


その言葉を聞いてコクリュウは一瞬目を見張ったのだが、観念したのであろう。


「はい、承知いたしております。」


と、短く真面目に答えた。


知らない者が見れば、まさにふたりの関係は「お姫様と従者」かもしれない。
逞しく精悍な黒髪の従者が、駄々をこねている姫君をなだめているくらいにしか思えない。


「ねぇ、コクリュウ・・・私、本気だよ。
コクリュウは龍神様だし、ずっと年上だし、私のことはお子様としか感じてないんだろうけど・・・。
きっと結婚も父様にああ言った手前、断れないから仕方なくするんでしょ?
でも私はそれでも嬉しいよ、本気でコクリュウの奥さんになりたいと思ってるから。
いつか私と同じくらい、私のことを好きになってくれればそれでいいよ。」


『・・・なんと聡明な。』


コクリュウは心の中で感心してから、ゆっくりと頷いた。
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