竜王様のお約束
たまたま、ざわめく廊下に居合わせた、赤い髪をした日本人形のような雰囲気を持つ龍族の娘は、これ以上ない程に目を見張り、両手で口を押さえて驚きを隠せないでいた。


そう。


偶然にもハクリュウと、ばったり遭遇してしまったのは、イオリであった。


そんなあわあわしているイオリに気がついて、ハクリュウは勇み足で歩み寄って行く。


「なんと・・・丁度よいところに・・・。
イオリ、緊急事態だ。
コウリュウの所へ、我を連れて行け。」


真剣な表情でイオリの隣に立ったハクリュウは、自分を見上げるイオリを見つめた。


そんなハクリュウを、イオリも眉を潜めて、見つめ返す。


「ハクリュウ様が天界に姿を現すという事が、何を意味するのか、分かった上での、来訪なのですよね?」


「だから、緊急事態だと言っておろうが!
何もなければ、天界になどやって来ぬわ!」


「緊急事態・・・とは?」


「ここでは言えぬ。
早々に、案内いたせ。」


ただならぬハクリュウの気迫に、イオリは頷いた。


「承知致しました。」


ハクリュウが、考えなしに動く人物で無いことは、イオリはよく分かっているつもりだ。


コウリュウが必死に立ち回り、苦労して天界中についた、竜王陛下崩御の嘘八百は、呆気なく幕を閉じそうであった。

< 31 / 257 >

この作品をシェア

pagetop