竜王様のお約束
ヤヨイは尚もキリュウに、怒りをぶつけた。


「コウリュウさんが、私の目に興味を持ったのは本当よ。
でもそれは、私の瞳にコハクさん自身を、重ねてしまったから。
コウリュウさんはあの時、哀しいくらいに、コハクさんを想ってたの。
そんなコウリュウさんが、私を寵姫にするなんて、有り得ないよ。
私をこんな所に連れてきたって、なんの意味もないんだからね。」


キリュウが放つ妖しい視線が、粘着質な光を帯びて、ヤヨイを捉える。


言い終えたヤヨイは、はたと、狂気にも似たキリュウの視線に気がづいて、冷たい汗が背中を伝うのを、感じた。


「アハ・・・。
言ってくれるねぇ。
ヤヨイを連れてきた意味は・・・あるよ・・・。
君を使って、僕がコウリュウよりも優れているってことを、あいつに分からせてやるんだ。
コウリュウが、僕より上の立場にいることは、絶対許せない。
あいつが邪魔をしたから、コハクを僕のモノにできなかった。
今回ハクリュウ王の後を継いで、あいつが竜王になったのだって・・・。
そう、いつもコウリュウが僕の邪魔をするんだ。」


「コウリュウさんが邪魔を?」


「そうだよ、琥珀の時もそうだ。
コウリュウが、僕達の仲を引き裂いて、コハクを奪ったんだ。」


ヤヨイは、とてもキリュウの言葉を信じられない。


昔語りを聞いた時もそうだったが、今まで一度もキリュウの名が出てきた事は、なかったからだ。
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