魔物は其処に
魔物は誘(いざな)う


真冬だというのに、降り注ぐ日射しはまるで、春のような暖かさだった。

それは、午後の気怠い時間を迎えた今、人を心地よさへと誘う魔物に姿を変える。



「だめ、瞼が重たい」

「だなー」


腹一杯だから余計だよな、と付け加え、私の彼──湊は小さく伸びをしている。



ここは図書館。小声で話しても場所柄、多少なりとも声が響いてしまう。

気になって辺りをチラリと窺うと、ここへ一緒に来たもう一人と目が合った。


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