魔物は其処に
抵抗しなかったからか、彼はまた私の唇を奪う。
さっきとは違い、深く、長く。
「待、って」
胸を押すと、彼は顔にばつの悪さを滲ませた。
「湊の彼女だってわかってるのに……抑えきれなかった」
その言葉は、私の心を震わせた。
「悪い男だよな、俺」
本当に悪いのは私だって言ったら、彼はどう思うだろう。
私が惹かれたのは、湊ではなく彼だった。
整った顔立ち。誠実な人柄。そんな彼がモテない訳はない。
だから、私は回り道をした。
彼と仲の良い湊と一緒にいれば、いつか好機が来る、と。
魔物に誘われた、彼。
私は上目遣いで彼の瞳を見つめると、ゆっくり彼の首へと手を回した──。


