魔物は其処に



「あの辺、見ていい?」


彼が指差した方向は、図書館の奥。

確かそこは、彼が探すであろう経済学の本ではなく、洋書のコーナーだった筈。


彼はそう言ったきり、私とは目を合わせず前を歩く。



辿り着いた通路には予想通り、誰もいない。




「────……ッ」



息を呑む音も聞こえたんじゃないかと思う程、静まり返った空間で──空気が、揺れた。


「……ごめん」


彼の口から、切なく零れた言葉。

私の唇には、まだ感触が残っている。


< 3 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop