恋の扉をこじあけろ
ビスケットにチョコレートのペンで『琴乃21歳おめでとう(笑)』と冬実の女の子らしい字で書いてある。
なにが(笑)よ?
わたしはモグモグ口を動かしている冬実をまっすぐ見据え、フォークをぐっと握りしめた。
決意してきたことを冬実に宣言する。
「冬実、わたし決めたことがあるの」
「ふうん、何?」
「わたし、恋をするよ!」
ただ年食うだけじゃなくて、精神的にも成長しないとね。
冬実はフォークを持ったまま、きょとんとしてわたしを見ている。
ふははは、恐れいったか琴乃さまの成長ぶりに!
「恋をするってあんた…もうしてるじゃないの?」
今度はわたしがきょとんとした。
「誰に?」
「的井先生よ」
「的井先生はちがうよ~」
おばさんみたいに手を振って否定すると、冬実は片手を額にやって目を伏せた。
「この間言ったことは悪かったと思ってる。あのあと私、考えたの」