恋の扉をこじあけろ


焦っている間に、先生はわたしにエプロンをつけてくれる。


今日はうっかり反応してしまわないように気をつけていたけど、くすぐったいし絶妙な触れ具合だしで、また肩を揺らしてしまった。


「ごめん、くすぐったかった?」


先生に言われてぎくりとした。


「ちょ、ちょっとだけ」


反応しといてそんなことはないとも言えず、正直に言うと、先生は笑ったような気がする。


今はマスクしているから、表情がうまくつかめないけど。



ひととおりいつもの診察を終えると、先生はわたしにメモを渡してきた。


「家の場所。迷わないようにね」


近くの人たちに聞こえないように耳元で小声で囁かれて、わたしはこくりと頷いたまま顔があげられなくなった。


< 170 / 278 >

この作品をシェア

pagetop