恋の扉をこじあけろ


水を飲む冬実を睨みつけると、冬実の首にネックレスがないことに気づいてはっとした。

誕生日に彼氏からもらったんだと言ってうれしそうにして毎日つけていたのに。


「ん?どうしたの?」


わたしの視線に気づいた冬実が、微笑みを浮かべながら小首を傾げた。


なんでもない、と首を横に振って、今度はわたしが水を飲んだ。


昨日だって、あんなに好き合っていた元彼のグチを川崎さん相手にこぼしていた。



わたしよりも多くの恋愛経験値を持っている冬実でさえ、うまく行かなくて悩むことがある。



恋って、本当に難しい。



水に映り込む自分の物憂げな表情を見つめながら、ため息をこぼした。



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