恋の扉をこじあけろ
「会えないの?何で?」
「何でって…恥ずかしいもん」
「いいじゃん。キスした仲なんだから」
冬実がからかってきて、冬実の思惑通りに赤くなってしまう自分が悔しい。
「それだって…、酔ってたからかもしれないし」
一番考えたくないことを弱気に任せて言葉にすると、冬実は難しそうな顔をして、頬杖をついた。
「そうだねー。その可能性のほうが高いね」
心臓にグサッと何かが刺さるのを感じた。
キスをされて少し浮かれていた心に、もわもわと雲がかかり出した。
「ひどい、冬実」
思わず涙ぐむと、冬実はいたって真剣な顔でわたしを真っ直ぐに見てきた。
「世の中いいことばかりじゃないんだよ」
恋愛の酸いも甘いも知っている冬実はわたしを甘やかしてくれない。
だけど、ちょっとくらい否定してくれたっていいじゃない。