恋の扉をこじあけろ

先生が背後で作業している間、わたしはおとなしくしておいた。


口を濯ぐための紙コップに描かれている花の絵を見たり、古くなって少し塗装が剥がれかけている診察台のひじ掛けを指でなぞってみたりして、ヒマを潰した。


一回だけ、我慢できなくて後ろをちらりと振り返ったとき、先生と目が合ってしまった。


それからはもう振り向けないでいる、馬鹿なわたし。


「よかったね、くっついたよ」


先生は元どおりにきれいに直してくれた。

折れたあとなんて全然わからない。

折られたことなんてなかったみたいな美しさ。


感動していると、わたしの手からスプリントを取り、台の上に置いた。


またつけて噛み合わせを調節するかと思っていたのに、違うようだ。


先生はゴム手袋を新しいものに付け替えた。


なんだろう?

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