恋影
第一章





花びらが夜空に舞い上がる季節。



月明かりに照らされる様は、まるで雪のようだ。



ハラリ……。



ハラリ………。



と、地面に落ちて行く……。



静かに静かに、落ちて行く……。




ーービシャッ!



それはあまりにも突然、訪れた出来事であった。


そして、一生忘れることの出来ない痛み……。



自分の目の前で赤い飛沫が上がる。



迫り来るう炎の中……。



絶対に忘れることが出来ない奴の目……。



許さない、


絶対に許さない!



持っていた自分より大きな刀で、そいつを斬ろうとしていた。



だが、誰かがそれを止めて、私を抱え上げた。


それと、同時にまた血の飛沫が上がった………。










それから、どれくらいの時が過ぎたのだろうか……。



気がついたら、見慣れない部屋に寝かされていた…。



「目が覚めましたか…?」


「?」



襖越しに立ってこちらの様子を伺っている男がいた。


いったい、誰なんだろうか…?


その男は布団の傍らに座り、私に手を伸ばして来たが、それを思わず避けてしまう。


「……!」


「……怯えることはありませんよ。ここは安全な場所ですから……。」


男は私の額に乗っていた手ぬぐいを取ると、桶にそれを浸し始めた。


「目は覚めたのかい?」


今度は後ろから、女が姿を現していた。


タバコを加えて偉そうに踏ん反り返っている。


「ああ…。」


「だったら、早くこっちによこしな!こんな所でいつまでも寝てられたら困るんだよ!」


「!」


女は入ってくるなり、私の腕を掴み引きずり起こす。


だが、男がそれを制するように女の手を止める。


「やめないか!まだ、幼子だぞ!?」


「幼いうちにしつけをしとかないと、後で困ることになるんだよ!さあ、来な!!」


「……っ!」


「【咲子】!!」


無理矢理腕を力任せに引っ張られ、私は女に連れられて行った。



ードサッ!



鈍い音と共に、身体が地面に打ち付けられる。


「【養女】としてこのうちに来たからには、その身体が使えなくなるまで、働いてもらうからね!覚悟しな!!」


咲子は土間にあった桶と雑巾を、私に投げつける。


「さあ、それで道場でも磨いて来な!塵一つ残すんじゃないよ!!」


「咲子!やめなさい!!」


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