恋影
だが、それには大きな決意が必要だ。今までのようには行かない。戦いで命のやり取りをしていくのだ。
生きるためにはそれなりの覚悟が必要だ。
白鳴は首にかかっている笛を取り出し、それを吹いてみる。
ピィーーと透き通るような音で鳴り響く。まるで、運命を引き寄せるかのように……。
ピィーー……。
ピィーー……。
何度その笛を吹く。
白鳴はそれを握りしめ、まだ震える手で、その運命を受け入れる覚悟を決めるのであった。
翌朝、皆が寝静まっている頃、白鳴は目を覚ました。
その場で寝てしまったのか、毛布がかけられていた。
周りでは桜や、他の娘達が眠っていた。白鳴は起こさないように、そっと部屋を出た。
裏庭へと行き、井戸で顔を洗う。まだ、朝の冷たい水が、肌をヒンヤリと冷やし目覚めさせてくれる。
「………ふぅ。」
顔を洗い終えると、白鳴は勝手場へと向かった。昨日から何も食べていないのだ。
皆すでに朝食をすませた後なので、残り物がないかを確かめる。
「ない……か。」
お釜の中には何も残っておらず、肩をすくめる白鳴。
そこへ、後ろから手が伸びてきて、白鳴の肩を叩く。
「!?」
「しーー…!」
口に手を当てて黙るように言う。それはもう寝ているはずの明美であった。
「……明美姐さん。」
「ついていらっしゃい。」
白鳴は言われるがままに、明美について行く。
明美は自分の部屋へと白鳴を招き入れる。そこには、ないはずのお膳が用意されていた。
「………!」
「……まずは座って、お食べなさい。」
「………いただきます。」
白鳴は明美に言われるがままに座り、用意されたお膳を食べ始める。
「美味しい?」
「……はい。」
「……良かったわ。白鳴には芸妓になるすべは教えたけれど、他のことについては、何も教えていなかったわね。」
「…………。」
「それは私が作ったのよ。」
「……えっ?」
「人に作ったのなんて、何十年ぶりかしらね。そうやって美味しいと言ってもらえると、とても嬉しく感じるわ。」
「………。」
「白鳴、私はあなたがどんな選択をしようとも、止めはしないわ。武市さんの所へあなたが行きたいのなら、行かせるために、どんなことでもするでしょう。でもね白鳴……。」