撮りたいの?撮りたくないの?◇TABOO◇
剛君は
仕事はやり手だけど
へタレだ。
「剛君出てきて」
『だって萌ちゃん、いつものイク時の顔してるんだもん』
泣いてるし……何をいまさら
「お仕事だもん」
『もう撮れない。萌ちゃんのイク時の顔は僕だけのものなのに』
「どうしたの急に?」
『わからないけど、もう限界』
剛君も悩んでたのかな
監督としては一流なのに
私生活がへタレすぎる。
『萌ちゃんが好きだ』
「私も剛君が好き。だから一緒に考えよう。この作品が終わったら考えよう」
返事がない。
「帰りにハーゲンダッツ買って帰ろう」
『……うん』
やっと返事をもらい
剛君は涙を拭いて現場に戻り、厳しい監督の顔となる。
仕事は中断したけれど
ちょっと嬉しい私だった。
【完】