†captivity†(休載)
中学1年、夏頃。
今までずっと精神が安定していた灯が、崩れた。
ひどく傷ついた顔で、それでも仕事として僕の家に来た灯。
『ごめんね奏多』それしか言わない灯に、何があったのか聞こうとしたけど、聞き方がわからなくて。
苦しみをなくしてあげたくても出来なくて。
いつの間にか、僕の方が代わりに泣いてしまっていた。
僕はいつも助けてもらってるのに、僕は灯の何の役にも立てないのか。
そんな自分が悔しくて。
なのに灯は、そんな僕をいつもの通りに慰めてくれて。
大丈夫だよって、俺がついてるよって、慰めてくれて。
違うんだよ。
僕が慰めるべきなんだ。
言いたいことが、うまく言葉に出来なくて。
それでもなんとか、「灯、なにかあったの」って聞くことが出来て。
「聞いてくれるの?」
こくん。
頷くしか出来ない僕に、話してくれた。
小学校の時からかわいがってもらってた先輩が、苦しみから荒れ始めた。
何があったのか聞こうとしても、怖くて聞き出せない。
僕は話を聞くだけで何のアドバイスも出来なかったのに、灯は「聴いてくれてありがとう」って言ってくれた。