†captivity†(休載)


中学1年、夏頃。

今までずっと精神が安定していた灯が、崩れた。



ひどく傷ついた顔で、それでも仕事として僕の家に来た灯。

『ごめんね奏多』それしか言わない灯に、何があったのか聞こうとしたけど、聞き方がわからなくて。

苦しみをなくしてあげたくても出来なくて。

いつの間にか、僕の方が代わりに泣いてしまっていた。



僕はいつも助けてもらってるのに、僕は灯の何の役にも立てないのか。

そんな自分が悔しくて。



なのに灯は、そんな僕をいつもの通りに慰めてくれて。

大丈夫だよって、俺がついてるよって、慰めてくれて。



違うんだよ。

僕が慰めるべきなんだ。



言いたいことが、うまく言葉に出来なくて。

それでもなんとか、「灯、なにかあったの」って聞くことが出来て。



「聞いてくれるの?」



こくん。



頷くしか出来ない僕に、話してくれた。



小学校の時からかわいがってもらってた先輩が、苦しみから荒れ始めた。

何があったのか聞こうとしても、怖くて聞き出せない。



僕は話を聞くだけで何のアドバイスも出来なかったのに、灯は「聴いてくれてありがとう」って言ってくれた。
< 119 / 392 >

この作品をシェア

pagetop