†captivity†(休載)


緒方心が、僕を見る。



さっきまでは、すごく怖い人だと感じていたはずだったのに、今はそんなことは思わなかった。



「どうしたい?」



優しくそう聞いてくる緒方心に、僕は、ちゃんとした言葉をようやく音にできた。



「かかわりたいです」

「あぁ」

「きっといい人だから」

「言ったろ、俺は善良だ」



こくり、僕は頷いて。



「変えたい、僕のこれから先ぜんぶ、変えたい」

「変えてやる」



緒方心は、そっと僕の頭に手を置いた。



「これからは誰も近づかなくなるかもしれない。寂しい思いするかもしれない。それでも本当に、いいんだな?」

「誰もいなくなっても、二人がいるなら、いい」



灯の先輩のアズマサトル。

そのアズマサトルを救ったオガタシン。



僕は灯からそう聞いたから。

だからきっと、なんの迷いもなく信頼できているんだ。

灯だってきっと、今まで通り毎日僕の家に来るだろう。

二人と仲良くなれて、灯とアズマサトルがまた仲良くなれる橋になりたい。



いろんな思いが混じって、僕はこの決断をしたんだ。
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