†captivity†(休載)
こもった音の中、東先輩が立ち上がった。
冷たい瞳、口元にいつもの笑みはない。
上から睨み付けるように向けられる視線に、あたしも東先輩に視線を向ける。
「緒方先輩、耳、大丈夫です」
そうあたしが言うと、ゆっくり、緒方先輩の手が耳から離れた。
「君がここまで頭が悪いとは思わなかった。別にそこまで大きな期待を抱いていたわけではないけれど、幻滅したね。君は奏多や心とだけ楽しくやってればいいんだよ」
「悟、そこまでに──」
「緒方先輩」
あたしは、緒方先輩の言葉を遮って言った。
「いいんです。聴きます」
「は?お前……」
「あたし、実は怒ってるんです。東先輩を信じて待ってる人がいるのに全てに壁を作るなんてバカじゃないですか?」
「……あ?」
東先輩のドスの効いた声にもかかわらず、怒っているあたしはそんなことも気にしなかった。
「東先輩は臆病者のヘタレです。まだ奏多くんのほうが勇気ありますよ」
後の祭、とはこのことか。
……まずい、言ってしまった。
後悔してももう遅いけれど。