†captivity†(休載)


灯くんは、靴を履き終え、あたしを待っている。

彼がなにを考えているのか……全然わからない。



「行くよ、和歌」

「どこに?」



彼は再びあたしの手を取った。

動作がさり気なくて、慣れてるような気がした。



あたしに視線を向けたまま、手を取ると彼は言う。



「デート」

「は……?」

「デート行こうよ」



まさかの発言に、あたしの頭は真っ白だ。



「奏多とだってデートしたじゃん。あんな感じでいいから」

「や、あの、でも……」

「なに?」



……なんでだろう。

なぜか胸がもやもやする。



今あたしの手を取っているのと逆の手が、熱を持つ。

力強い腕の感覚が、まだ消えない。



離れたかったはず。

離れられた。

希望は叶った。



なのになんで……その後のことが気になるんだろう。

今……先輩がなに考えてるかなんて、ちょっと悪いことしたかな?なんて、思うだけ無駄なのに。



なんで気になるんだろう。

なんで灯くんの誘いを断る理由を探しているんだろう。
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