†captivity†(休載)

──自覚した恋心




緒方先輩の部屋で、緒方先輩に抱きしめられて、緒方先輩のぬくもりを感じる。

……さっき緒方先輩に言われた。



『和歌が好きで好きでたまんねぇんだよ』



抱きしめられて、そう告白されて……私も彼に惹かれていたと気付いて、ポロリ、涙が出た。

嬉しい。

でも知歌のこともあったから、自分の気持ちを素直に出せなくて。



あたしは、再びポロポロと涙をこぼしていた。



だめ、泣き止まないと、気付かれちゃう。

今あたしは緒方先輩に抱きつかれたまま、その背に手を回すべきか考えている。

彼を受け止めたい、でも知歌が……。



「……和歌」



ぐすっ、静かなこの部屋では音が響いてしまう。

泣き虫だと思われちゃうな。



「俺じゃやっぱり、ダメか?」

「ちがっ……そ、じゃなくて」



でも、それってどうなんだろう。

知歌も先輩もなんてよくばり過ぎかな。

ずっとずっと、知歌の幸せを見届けることだけ考えてきた。

あたしが先に幸せを掴んだら、きっとまた知歌は劣等感が増える。


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