†captivity†(休載)

一番近くで知歌を見て来た。

あの冬は毎日苦しそうで、毎日体調が悪そうで、毎日無理をしていた。

心配でしかたないのに、あたしが近付けば知歌は笑うんだ。

大丈夫だよって。

何週間経っても、何ヶ月経っても治る傾向はなくて、時には異常なほどの怒りに襲われることもあったって聞いた。

それはもう、触られるだけで殴りたくなるほどの、殺意にも近い感情もあったらしい。

今までは全くと言っていいほど『怒り』を体験したことがなかった知歌が……。

……いや、だからこそなのかもしれないけれど、知歌自身にも感情をどうにもできなくて、その怒りをベッドを叩いたり、腕に爪を立てたりして治まるまで部屋に引きこもっていた。



心配かけないように音を立てないようにしていたんだろうけど、部屋が隣だから聞こえてたし、爪痕だって偶然見てしまった。

ストレスが溜まりすぎると、怒りや涙となって身体が訴えてくると、心理療法士さんにも聞いた。

あたしにはどうにも出来ないことがもどかしくて、ひたすら知歌の幸せを願っていた。
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