†captivity†(休載)
「のんすんですこ!?」
「……あ?」
しまった、『何すんですか!?』と言いたかったのに頬を掴まれてるせいでまともに喋れなかった!!
あ段がお段になってしまう!!
「お前、その額なに?」
「……??」
掴んでいるもう片方の手で、さらりと前髪を横に流される。
「ぶつけたのか、それともぶつけられたのか」
その視線の先は……恐らく先程教室で机に顔面強打した時のもので。
え、ていうかなんで前髪あるのに気付いたの?
そんなに酷い状態になってるの?
確かに未だにヒリヒリはしているけども。
まさか腫れてる?
「あ、それさっき和歌が自分でした怪我です」
そう慌てて説明してくれたのは、灯くんだった。
「……あ、そ」
納得したのか、東先輩は手を離してさっさと校門へと向かってしまう。
なにが起きたのか、呆然としていたあたしに
「あれ、心配してくれただけみたいだよ」
そう教えてくれたのは、灯くん。
「しん、ぱい……?」
「先輩たちといると、少なからず反感を持つ人も中にはいるから。それで怪我させられたんじゃないかと、思ったんじゃないかな」
あの冷徹鬼畜悪魔の、東先輩が……?
あたしを、心配してくれていた……。
「和歌午前中もいなかったしね」
「東先輩……ちゃんと人の心を持ってたのね……」
「それ本人に聴こえると本当に殺されるから胸に仕舞っておいてね」
その後すぐに奏多くんがあたし達二人を呼びに来てくれて、灯くんだけ家の方向が違うので別れてから、三人で心くんの家へ向かった。
どうやら灯くんは心くんの家に行くのには受け入れられていないらしい。
更新の時は東先輩も心くんの家には行っていなかったみたいだけど、なぜなのか今日の朝あたしが心くんの部屋に連れていかれたことを知っていた東先輩は、その件を心くんに問いただそうとしているそうだ。
どこ情報なのかは不明だが、それを知っているのにあたし達が付き合っているという話題については出なかったから、恐らくまだ付き合い始めた事実は知られていない様子。