†captivity†(休載)


知歌は不安を拭う為にあたしを求め、あたしは知歌の不安を取り除きたくて知歌から離れることが怖い。

普段はあたしがいなくても大丈夫になって来たけれど、今でも時々、その不安のスイッチを押してしまうと、酷く取り乱してしまう。

そんな時、あたしが宥めると落ち着くのが早いのだ。



「共依存、してるんです。知歌の不安の強さが主な原因なので、治療しているのは知歌。あたしは離れて見守っていることしか出来ません」

「依存なら、完全に離れないで大丈夫なのか?」

「意外と、あたしの方の依存状態が低いので、関係性が崩壊せずに済んでいるうちはこのままで大丈夫だろうって、家族で話し合ったんですけど。だから知歌とは学校が別々なんです」



知歌が特に強く不安を抱えてしまう理由は、あたしには解らない。

けれど、努力して、少しずつ回復していく知歌を、あたしはただ見守る。

見守って、手を出し過ぎないのが、あたしの役目。



「『特にプールとなれば』って言ったってことは、それが弟の問題に引っ掛かるからか?」

「そうです。まだ強い不安を受けた時のコントロールまでは出来ていないので、それは排除しないと、きっと家で震えて待たせることになるでしょうから」



あたしが大丈夫だと言った所で、知歌の不安は消せない。

夜遅くに帰ったあの時もそうだ、電話もメッセージもすごい量を送って来ていて、ずっと何時間も不安にさせていたことがわかる。



「姉想いすぎるんだろうな」

「そうですね。想われ過ぎちゃって可愛すぎます、うちの弟」

「昔も言ってたな、『弟は可愛すぎて困っちゃう』って」

「それって出会ったときに話したことですか?」

「変わってねぇよな。可愛いもの好きなところ」



そう言って心くんはふわりと頬に手を当て、顔を傾けて近付けてくる。

だからあたしは、そっと瞼を落として、その甘い甘い彼を受け入れた。


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