君が好き





ん?



さん、やめてください


その言葉を頭で再生し、
解釈を試みるがどうも上手く行かない。





「あの、加藤さんっていうの。
なんか…くすぐったいので。

加藤で、お願いします」



「あ、なるほどな」


そういうことか、びっくりした、なに言われんのかと。



自分自身にこぼした苦笑いに加藤も笑う。





なんだろう、なんか、すげぇ。





幸せ、だ。






「うん、そうだよな、うん。わかった。



じゃあ、加藤さ、じゃなくて。
加藤。また、今度」


「はい。また、」




笑う彼女はやっぱり綺麗で。

だけどやっぱり、
となりにいるようで、遠い。


何かを隔てているように感じる。



それはただの俺の勘違いなのだろうか。






加藤の後ろ姿に答えを見つけようとしたけど、
結局はなに一つ分からないままだった。





< 31 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop