猫人・人猫
将来……考えてない。
小さい頃は、なりたいものが沢山あった。
魔法使いのヒロインを始め、お花屋さん、ケーキ屋さん、看護師さん、保育士さん……でも、今はどれもピンと来ない。

「まあ、別に今考えろとは言わないけど、近いうちに考えておいた方が良いぞ」

スプーンを皿に置き、眉間にしわ寄せ考え込む私に、お父さんが言う。

「そうねぇ。お祖母ちゃんはむっちゃんが何になりたくても応援するよ」

「ははは……ありがとう」

「早いとこ相手探して、嫁に行くのが一番だ」

お祖父ちゃんはサラダをバリバリと食べながら、私に無理難題を押し付ける。
そりゃ、探しているさ。
そういうの気にし出す時期からずっとね。
でも、そう簡単に見付かるものじゃないし。
……まだ早いし。

「嫌だ、お義父さんたら。まだまだ先のことですよ」

お母さんがそう言って笑うと、皆口々に「確かにそうだ」と相槌を打ち笑った。
まだまだ先か……進学、就職、結婚、これから先も考えなければいけないことは山積み。
どれも大切なことだとわかってはいるものの、やはり面倒だ。

ふとキッチンと隣接しているリビングに目をやれば、ソファの上でおたまが寛いでいる。
やっぱり羨ましいなぁ……そう思いながら、私はスプーンを口に運ぶのであった。





.
< 5 / 6 >

この作品をシェア

pagetop