瑠哀 ~フランスにて~
 ピエールはドレスの上に置かれていたバラを取り上げた。


「ルイ、僕達は君を心配しているよ」

「……わかっている、わ」

「だったら、僕達が邪魔だなんて、二度と言うものじゃない。

僕達は、君がここで持っている数少ない信用のできる人間だろう?

そういう者は、手元に置いておくべきだ」

「―――私は、すごい幸せものね。

こんなに勝手なことばかり言っているのに、まだ心配してくれる人がいる………。

ごめんなさい、巻き込んで」

「君は他人の心配ばかりしている。

はっきり言わせてもらうが、僕達が巻き込まれようと、僕達にはさほどの影響もない。

君のほうが、被害がひどい。

だから、僕達の心配より、自分の心配をするんだね。判ったの?」


 瑠哀は、うん、と静かに頷いた。



 ピエールはそのバラをベッドに投げ、瑠哀に向き直って、おいで、と片手を出した。

 瑠哀は歩いて行って、その手を取る。



 ピエールはその手をゆっくりと引いて、瑠哀を抱き締めた。


「君は、大丈夫なの?」

「今のところは、ね」

「なるほどね」


 頭の上でピエールが苦笑いしているのがわかった。


 瑠哀の勝手で迷惑をかけているのに、こんなにやさしくされたら泣けてきてしまう。
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