瑠哀 ~フランスにて~
 瑠哀は口を少し歪めて立ち上がり、スタスタと寝室に歩いて行く。



 朔也とピエールはその最後の言葉に眉をひそめ、瑠哀の歩いて行く背中を目で追った。

 ルイ、と朔也が声をかける。



「今入って来ないでね。着替えてるの」


 朔也とピエールは顔を見合わせた。


「出かけるのか?」

「そうよ。

マーグリスは自分の養子なのに、ケインのことを何一つ知らないんだもの。

仕方がないから、あの男に情報を頼んだわ。

だから、着替えているの」

「あの男?誰だ、それは?」

「ヴォガーよ。覚えている?

パーティーで会った、あの男。

もうすぐ来るの」

「なっ―――!!」



 朔也は立ちあがって、寝室に駆け込んだ。

 瑠哀に問いかけようとして、その動きがハッと止まる。



 瑠哀が髪を一束に前にたらし、来ているワンピースのチャックを上げようとしている所だった。

 その開いたところから瑠哀の半裸の背中が露になっていた。



「入って来ないで、と言ったでしょう?」


 瑠哀は首だけを回し、めっというふうに朔也を睨め付けた。


 朔也はハッと我に返り、横を向く。
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