瑠哀 ~フランスにて~
「ごめん」


 瑠哀はチャックを素早く上げ、鏡台のところにスタスタと歩いて行き、そこにおいてあるファンデーションを取って足に塗り出した。


「なんで、あいつに会うんだ?

君は、あの男を嫌がっていたと思ったが」

「そうよ。

でも、私達には情報が少な過ぎてどうすることもできないわ。

こうなったら、手に入る情報はなんでも手に入れるしかないでしょうね。

でも、知っていると思うけれど、その情報というのは、タダではないのよね。

残念なことに。

それで、食事をする羽目になったの」


 朔也は、むぅ、と険しい顔をして、腕を組み出した。


「―――そんな、胸の開いた短いドレスで行くのか?」


 そこにピエールが寝室に歩いて来て、瑠哀を見る。


「なに、その格好で行くの?

それは、まずいな。あいつを刺激しすぎる」

「ふふ。

この上にカーディガンも羽織るわ。

でも、これでなにか余計なことを話してくれないかと、期待してるの」

「となると、僕達は一緒に行けない状況にあるんだね」

「そういうことになるわね」
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