瑠哀 ~フランスにて~
 瑠哀はそれを受け取って、中から書類のようなものを引き出した。


「その報告書を見ていただければ判りますが、

ケインは相当あくどい評判がたていますね。

よく、こんなことがマーグリス氏に知らせずに済まされたと思うほどです。

ですが、あなたの予想された通り、彼にはかなり頭の切れる坊ちゃんがついていますね。

彼の名は、リチャード・ユーゴ。

ケインと同じ大学に在籍しています。

中に写真があるので、ごらんになってください」


 瑠哀はその書類にクリップで留められていた写真を見る。


「彼です。彼は、ケインの友人ですか?」

「さあ、それはなんとも言えません。

よく一緒にいるようですが、友人と言うには、その関係も確かなものではなくて。

よく、ケインとリチャードが口論している所も目撃されています。

まあ、その場合は、いつもリチャードが適当にケインをあしらっているそうですが。

ところで―――、これは、マーグリスの財産争いが絡んでいるようですね」


 瑠哀は視線だけを上げて、男を見やる。


「鋭いですね」


「まあ、これでこの世界を渡り歩いていますから。

それに、この情報を見ればなんとなく推測できます。

どこの世界でも、金ある所に争いあり、と言うでしょう?

それに、ケインの養子の地位と言うのは、かなり危うい状態にありますからね」

「それは?」
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