瑠哀 ~フランスにて~
 朔也は一歩前に出た瑠哀を止めた。

 瑠哀は手を上げて朔也を抑えるようにし、ゆっくりと一歩ユージンに近づいた。



「こないで―――っ!ぼく……ぼく………」

「ユージン、大丈夫よ。

大丈夫。

私はあなたを傷つけたりしないわ」


 瑠哀は両手を上げながら優しく微笑み、ゆっくりとまた一歩前に出る。


 一歩進み、また止まる。


「ユージン、大丈夫よ。

誰もあなたを傷つけたりしないわ。

安心して。私は、あなたを傷つけたりしない」


 また、一歩進む。


「ぼく……ぼく、こんなこと………するつもり―――」



 ユージンの嗚咽がこみ上げてきて、体中が激しく揺れている。

 朔也はそれをひやりとして見ていた。



 全身が激しく揺れているだけではなく、その握った指がブルブルと震えていて、なにかの拍子にその引き金を引いてしまいそうだった。



 あれほどユージンの近くにいる瑠哀なら、銃が吹き放たれたら、ただでは済まない。

 幸い、今回はそこまで強く引かれなかったが、次はどうなるかわからない。



「わかっているわ、ユージン。もう、大丈夫よ。

もう、大丈夫。私がついているわ。

それは、とても危険なものなの。

だから、ゆっくりと床に置いて、ユージン?

それが間違えて吹かれたら、ユージンだって怪我をするかもしれない。

私は、それが心配なの。

お願い、ユージン?」
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