瑠哀 ~フランスにて~
「わかるわ。

―――そうね。

ピエールの言う通りよ。

あの男は、なかなかに面白いことを話してくれたわ」


 瑠哀はふっと微笑み、意味深な視線を朔也に投げる。


「なに?」

「ふふ。ちょっと、面白いことを耳にしたの。

ねえ―――、カズキグループの御曹司殿を知っている?

あの、世界に誇る霞月財閥の御曹司」

「それが…、あいつの話したことか―――」


 朔也は小さく苦笑いして、背もたれに寄りかかる。


「通りでね。あなたはただの学生じゃないと思っていたわ。

マーグリスの屋敷に正式にいることを許されている、と言うのは、

カズキグループと関係があるのかしら?

あのカズキグループと言えば、世界中のありとあらゆる所に支部があり、

その収益はどこかの国のGNPを上回る、とも聞くわ。

フランスで有名な支部は、KAZUKI-Electro-Cooporationよね。

西欧全土にそのネットワークが敷かれ、互いに互い情報交換をし合い、

先行く未来にむけての科学技術の向上に貢献している」


「あいつがそれも話したの?」

「いいえ。

彼は、ただ、カズキグループがマーグリス一族の経営に乗り出したのか、

と聞いてきただけよ。

自分のビジネスになにか関係があるかと思ったんでしょう」
< 156 / 350 >

この作品をシェア

pagetop