瑠哀 ~フランスにて~
「この私に臆せず叱りつけてくる娘がいるとは、知らなかった。

だが、小娘なのに、その娘の言っていることは他の誰よりも正しかった。

――――マドモワゼル・ミサキと言いましたね。

私は、どうしたらいいのでしょう?」


「何があったのですか?」

「昨夜、セシルを呼んで、私がユージンを引き取りたい、と伝えました。

ユージンのことは責任を持って育てるから、ユージンを引き取りたい、と。

そして、セシルにこの屋敷から出て行くように伝えました。

これからの生活に必要になるだけのものは与える、と言いました。

それを聞いたセシルはパニックを起こし、

自分からユージンを取り上げないでくれ、と泣き叫び出した。

そこに、ユージンが飛び出してきて、

引き出しにあった銃を取り上げ引き金を引いてしまったのです。

あそこに、ユージンがいるなど…、知らなかった。

興奮したユージンが、私を罵りながら銃をはなってしまったのです――――」


「あなたは、まだ、ユージンとセシルを引き離そうと考えているのですか?」


 瑠哀は闇より深い瞳を向けて、マーグリスにただ静かに問う。
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