瑠哀 ~フランスにて~
「違う!そうじゃない。

違うんだ――!

私は……ただ、ユージンが可哀相で………。

セシルがここに来て以来、あれは毎日怯えて目をしてビクビクと震えている。

ユージンが話しかけても、震えたまま何も言わない。

その気配に気付いたユージンは泣きそうな顔をしていた。

あれは、気が弱過ぎて、今のこの状態の屋敷にいることなど、できない。

だから、この屋敷から出るように言った。

ここから離れれば、少しは落ち着くかもしれない、と思ったんです。

このことが全て片付き、落ち着けば、

戻って来たかったら戻ってくればいいと言うつもりでした。

でも―――、ユージンの中で、私はあれを苛めて、

自分とセシルを引き離す割るものになってしまった。

………自分の孫に嫌われることが、こんなにも辛いものだとは知らなかった。

私は、あれに嫌われてしまったのです………」


「あなたは自分の愛情をどのように示したらいいのか、知らないのですね。

自分の感情を素直に表現する方法を、知らない。

今まで、他人の頭の上に平気であぐらをかいてきたあなたが、他人と同じ位置に立ってその人の気持ちを考える。

これは、難しいことでしょうね。

でも、これは全て、あなたが招いたものです」

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