瑠哀 ~フランスにて~
 ―――気がついたら、もう、マーグリスの屋敷だった。



 あの途中で降り出した雨に、体が半分以上濡れてしまった。

 だが、そんなことは、何も感じなかった。



 心も神経も麻痺したように、冷たささえ感じない。


 屋敷に戻ると、ピエールが駆け寄って来たが、瑠哀は軽く手を上げてそれを押し退けるようにした。


「後で……話す、から。一人にして―――。シャワー…浴びて、くる―――」


 ピエールの目を見もしない無表情の瑠哀に、ピエールは心配そうに眉を寄せて肩を掴む。



 瑠哀は静かにその手を退ける。

 何も言わないまま真っ直ぐ階段を上がり出した。



 自分の部屋のドアを背中で閉める。


『ルイ……?!』


 目線を上げると、朔也が驚いた表情で立ちあがった。



 瑠哀の姿を認めて、安堵したように一瞬瞳が緩む―――が、瑠哀の様子が変で、すぐに厳しい顔をして、瑠哀の元に駆け寄って来た。


『ルイ、どうし―――』

『濡れたから、シャワー…浴びる――――』


 その一言だけを言って、歩き出した。



 ルイ、とその腕を咄嗟に掴んだ朔也に、瑠哀は煩わしそうな顔をして、その指を剥がした。

 朔也を無視して、バスルームに行く。



 スタスタとシャワーのドアを開け、一気に水を流し出した。
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