瑠哀 ~フランスにて~
 瑠哀のその目はなんの色も映し出されていなく、いつもの優しく真っ直ぐな瞳が怯えて混乱したように揺れている。


 溢れる涙が、瞬きもしないその瞳からツーッと流れ落ちるだけで、朔也のことなど見えていなかった。



『ルイ、なにがあった?話してくれ』

『はな…して。おねが…い―――』

『いや、離さない。

こんな君を、一人にすることなどできない。

こんな状態の君を、どうして一人になんてできるんだ。

ルイ、何があったか話してくれ。

お願いだ。君を救すけたいんだ――――』


 朔也は堪え切れず瑠哀の手を離し、両手で瑠哀を抱き入れていた。


『………君の言った通り、俺は君を守ることなどできない。

守れると思っていたのに、君を一人で行かせた。

こんなに近くにいるのに、俺は君に何一つしてやれることができない。

俺は―――、無力だ。君がこんなになっているのに、俺は何もできない………』



 朔也の声が微かに震えている。

 瑠哀の濡れた髪にそっと優しくキスをする。
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