瑠哀 ~フランスにて~
 追え、と言う声を後ろにし、階段を一段飛ばして走り下りる。


『……あと、2階―――』


 だ――、と思った刹那、後ろから男が飛び乗った。

 悲鳴をあげる暇も無く、瑠哀はバランスを崩してその階段から転がり落ちた。



『うっ………!』



 強い衝撃が全身を襲い、呼吸が止まる。

 上に伸し掛かっていた重みがなくなったのに気付いたが、顔を上げることができない。

 意識が薄れていくのを必死で止めようと試みる。



「―――死んだのか?」



 頭の上で冷たい声がする。



「……いや、わからない」



 チッと、舌を鳴らし、男は屈み込んだ。瑠哀の首に手を当て、脈を確かめる。



「死んでないようだな。

―――まったく、余計なことをしてくれる。

これでまた、あの女の居所がわからなくなった」


 男はさも忌々しそうに言った。


「今日は、引きあげるぞ。人がきて、騒ぎ出したら厄介だ」





 ―――瑠哀はかすれる意識の中で、男達が去って行く足音を聞いた。

 そのまま、暗い闇へと意識が引きずり込まれて行った。


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