瑠哀 ~フランスにて~
「サーヤっ!」


 ピエールが行きかけた朔也を呼びとめた。


 振り返ると、瑠哀が眼を覚まし、起き上がろうとしているところだった。


 朔也は慌ててベッドに駆け戻り、起き上がろうとした瑠哀の肩を掴まえる。


「ルイ、ダメだ。君は、もう少し休まなきゃ。体がもたなくなる」

「……刑事、って、言わなかった?」


 朔也は返事をしない。瑠哀は肩に置かれた朔也の腕を優しく外しながら言った。


「私が、呼んだの。死体の第一発見者だから」


 朔也の表情がサッと変わり、険しく眉を寄せて瑠哀を覗き込む。


「死体?!―――君が、それを見たのか?」


「そう……。女の子。

ケインの犠牲になって………。

私を殺せば良かったのに―――」



 朔也は強く瑠哀を抱き寄せた。


 十六の女の子が死体を目の当たりにしたなんて。



 それも、たった一人で。

 一番辛いはずなのに、また、自分を責めている瑠哀が哀れでならなかった。
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