瑠哀 ~フランスにて~
「そうだね。よくもやってくれた。

このツケは必ず払わせなければ、僕の腹の虫が納まらない。

数少ない、最高の芸術を生む価値あるモデルに傷をつけ、

ここまで苦しめたのは許されないね。

彼を捕まえたら、ただでは済まさない。

僕を甘く見過ぎてる」


 ピエールはその口元にぞっとするほど冷たい微笑を浮かべた。


 朔也は小さく苦笑いして、ピエールに言う。


「殺しだけは、やめてくれよな」


 ピエールはふっと浅く笑っただけだった。


 開け放れた寝室のドアがノックされ、顔を回すとメイドがそこに立っていた。


「マドモワゼル・ミサキにお会いしたいと言う方がみえています」

「誰だ、それは?」

「マルセイユ市警の警部と刑事の方がおみえになっております」

「刑事?」


 朔也は思わず声を上げ、ピエールを振り返った。


 スッと、立ち上がり、メイドに告げる。


「わかった。俺が代わりに会おう。

今から行くと、伝えてくれ」


 メイドは頷いて、軽く頭を下げて出て行った。
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