瑠哀 ~フランスにて~
 刑事は朔也の通訳する通りに、サラサラと手帳になにかを書き写していた。


「どうして、彼があなただけに連絡してきたのですかね?

彼と、なにか問題がありましたか?」


 瑠哀は朔也を見て、朔也は、わかっている、というふうに頷いてみせる。


 刑事に向き直って、簡潔に今までの事情を話し出した。


「――――なるほど。

それでは、マーグリス氏の後継者争いが絡んでいるかもしれない、と言うことですね。

わかりました。

――それとですね、他のことなんですが、死体を見て、

なにか気付いたことはありませんでしたか?」


『それは、わかりません。

あなたはその死体を確認した方ですか?』


「ええ、一応、見ました。

死体は検死に回しましたので、結果はもう少しかかりますが、

死亡推定時間は昨日の深夜から今日の朝方にかけてだろうと、見積もられています。

死因は、絞殺死です。

体の数カ所に激しく殴打した跡が見られました。

―――これが、大体の検案となりますが」


『私が見た時と変わりはないと思います。

彼女は、なぜ、ここに来ていたのですか?』


「さあ……、それは何とも言えません。

彼女の身元を確認する所持品がないもので。

テレビなどで流して情報を集めるか、

大使館でなにかそれらしき情報を尋ねるかくらいしかできないと思いますが」
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