瑠哀 ~フランスにて~
 朝食を終えると、瑠哀はまだベッドに寝ているマーグリスの所に行き、話がある、と言った。

 側には、セシルとユージンがマーグリスの看病をしていたが、マーグリスが二人に部屋から出るように言った。


 マーグリスも、昨日の件で、瑠哀になにかあったことを気がついていたからだ。


「ルーイ、もう、からだはいいの?

ママンが、ルーイはちょっとぐあいがわるいから、やすんでるのよ、っていってたよ。

もう、いいの?」


 部屋を出る際に、ユージンが心配そうに瑠哀の腕をちょっと掴むようにして、瑠哀を見上げた。


「もう、大丈夫よ。ありがとう、ユージン。

もう、元気になったから、心配しないでね」


 瑠哀はいつも通りの優しい微笑みを浮かべ、少し屈んでユージンの頭をそっと撫でた。


 ユージンはそれを見てニコッと笑い、待っていたセシルの手を握って、部屋から出て行く。


 マーグリスはその瑠哀の様子を見て、少しホッとしていた。
 ―――が、朔也は違っていた。


 確かに、微笑んでいる。
 なのに、ゾワゾワと、なにか嫌な胸騒ぎがして、瑠哀の周りに不穏な空気を感じているようでならなかった。


 不意に見せる、あの口元だけの浅い笑み。


 そして、不気味なほど静かで無表情な色を表しているあの瞳。
 朔也と話しているはずなのに、なんだか、その言葉が瑠哀に伝わっていないような不安に襲われる。


 横のピエールも微かに眉間を寄せて、難しい顔をしている。
 どうやら、そう思っていたのは朔也だけではなかったようだ。
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