瑠哀 ~フランスにて~

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 ジリジリと熱い日差しがアスファルトを焦がしていた。

 風もなく、空気がそこで淀んでいるようだったが、湿気がない乾いたそれが、ただ日差しの強さと熱さを伝えていた。



 昼近く、そろそろ日差しが真上からかざしてきそうなその頃、瑠哀と朔也とピエールの三人は、ある場所の前に立っていた。



 朔也とピエールは、瑠哀が外出するので、もちろんのこと、その付き添いでそこにいるだけだ。



 二人がついてこなければ、瑠哀など、狙われているなのにそんなことさえ気にもしないで一人で出かけていたことだろう。


 現に、マーグリスの屋敷にかかってきた電話を受け取って、瑠哀は、


「出かけてくるわ」


との、その一言だけを残して、一人、外に出て行ってしまうところだった。


 「どこへ行く」とも言わず、「どんな用事が」とも説明せず、朔也とピエールが心配していることを承知で、瑠哀は何一つ説明しなかった。



 そうなると、二人の安否を心配している瑠哀だから、問い返しても決して口を開くことはしないだろう、との二人の一致した結論で、その場は何も聞き返しはせず、瑠哀が出かけるその供として一緒にやってきた。



 その目的の場所が、ここマルセーユ市警の警察署の前だった。



 ここにやって来た瑠哀は中に入ることもせず、ただ、少し離れて署の正面入り口に向き合うように立ち、そこで動くことはしなかった。


 何かを待っているような様子で、瑠哀はとても静かにそこに立っていた。


「まさか、ケインが釈放されるわけでもないだろう」



 朔也が目の前の建物の入り口を見やりながら、それを言った。

 瑠哀の返事があるかどうかは、特別、気にしていたわけでない。
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