瑠哀 ~フランスにて~
 瑠哀はただ静かに礼を言い、マーグリスに近寄って行った。

 少し屈むようにして、マーグリスの耳元に顔を寄せる。
 とても小さな声で、マーグリスになにかを囁いている。


 おまけに、手でその会話を隠すようにして話しているから、朔也とピエールには何を言っているのか全く聞こえなかった。


 マーグリスは少し瑠哀の方に顔を寄せて、その語られることに静かに耳を傾けていた。


 瑠哀が全てを言い終わると、その目を上げ、瑠哀を静かに見上げて行く。


「たぶん、問題はないでしょう。私にお任せください」

「ありがとうございます」


 マーグリスは首を振った。


「それでは失礼します。

しばらくの間は、不自由を我慢して下さい」

「ご心配なく」


 静かに返事をしたマーグリスに一度頷いて、瑠哀は朔也達の肩を押して部屋から出た。
< 207 / 350 >

この作品をシェア

pagetop