瑠哀 ~フランスにて~
 瑠哀は尾けられていた。

 もし、あいつらがまだ瑠哀を尾けているのなら、下手に歩き回るのも危険だ。

 あの男達を彼らと会わせてしまうことになる。



 そうは判っていても、歩きながら似たような親子を探してしまう。

 心のどこかでは、この危険を知らせなければならない、と言う思いがあったからだ。




『どうしよう………』



 一日中歩き回って、もう夕方になりかけている。

 このままここにいたからと言って、彼らに会える確立はほとんどないだろう。




 そんなことを考えている時、後ろから声がかけられた。


『……ミサキ、さん?』


 日本語だった。咄嗟に横を向くと、昨日の青年が立っていた。


『あなた――!?』

『やっぱりそうだ。長い髪だから、きっと君だと思ったんだ』


 青年は嬉しそうに笑った。


『…カヅキ、さんでした?』


 青年は頷く。


『良かった、ここで君に会えて。

何となく探してたから、ここで会えてラッキーだったな』

『探す?私を…?』

『うん、そうなんだ。ピエールも会いたがってるんだ』


 あの青年が自分に会いたがっている?

―――昨日の様子では、嫌われているのは確かだと思っていたのに、会いたがっているとは、どういうことなのだろう。
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