瑠哀 ~フランスにて~
 ズケズケと、随分な言われようだったが、ピエールはそんなことを気になどせずに、瑠哀に言いつける。


 頭ごなしに、押さえつけているようにも聞こえはしないでもないが…。


 ピエールがスッと腕を伸ばし、瑠哀の意向など聞かずに、そのまま瑠哀を抱き寄せた。



「こんな真昼から外に立っているなんて、倒れたらどうするんだ。

立っているだけで蒼冷めているなんて、貧血もいいところだ。

ルイ、用がないなら、いつまでもこんな所にいる必要はない」

「――日焼け、すればいいかしら…」

「そんなことを言っているんじゃない」


「…ピエール、ありがとう。

なんだか…、元気がでてきたみたい。

ピエールのおかげね」



 たかが抱き締めたくらいで元気が出るなど、そんなことがあろうはずもなし。

 ピエールは、端から、瑠哀の話すことなど信じる気はなかった。



 少し腕を解いた先で、瑠哀が少しだけ顔を上げてピエールを見上げて行く。


「ありがとう、ピエール。

ピエールが優しいから、私、元気が出てきたの。

だから、大丈夫。ありがとう、ピエール」


 はあ、と諦めたような、長い溜め息をピエールがこぼしていた。


 隣で朔也も同じように長い溜め息を吐き出した。


「本当よ。

二人がいるから、元気がでてきたの。

二人が優しいから、こんなに頼ってしまうの。

二人とも、ありがとう」


 朔也とピエールの顔を見ていれば、一目で、猜疑の色がありありだ、というのがわかる。


「だったら、一人で勝手なことはするんじゃない」



 瑠哀はその返事をしなかった。

 ただ、二人に、小さく笑ってみせただけだった。
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