瑠哀 ~フランスにて~
 朔也は掴んでいた腕を引き寄せ、そのまま瑠哀を抱き締めた。


「俺達は君に出会えて良かった、と本当に思っている。

君の傍にいることができて、本当に良かったと思っている。

俺達が君と一緒にいるのは、俺達の意思だ。

それで君が罪悪感を感じる必要など、どこにもない。

君なら、友達を見捨てることができるのか?

それを迷惑だと思うのか?

君は、そんな風になど思わない。

だったら、どうして、俺達だってそんな風に考えない、と思ってはくれないんだ?」

「……あなた、達は…、優し過ぎるわ」

「優しいのは、君だよ、ルイ」


 朔也は腕を解き、瑠哀の額にそっとキスをした。


 ピエールも側に来て、瑠哀の顔を寄せ頬にキスをする。


「ルイ、君はね、僕が初めて誘った女なんだよ。

そうそう簡単に、君を手放すと思うの?

僕は、それほど諦めのいい男じゃないよ。

欲しいものは、どんなことをしてでも手に入れる。

僕の欲しいものは、君以外にない」


「……どうして、二人とも私を責めないの?

こんな…我が侭な私に、――優しくしないで…」

「僕は、我が侭な女は好きだよ」

「俺も好きだな。

俺達は好みが似ているらしい。

知らなかったな」


 朔也とピエールが優しく微笑んでいる。


 瑠哀はなにも言えず、瞳を閉じうつむいた。
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