瑠哀 ~フランスにて~
 朔也がその瑠哀をもう一度抱き締める。


「……ごめん、なさい……」

「謝らないで。

君はなにも悪くない。

―――君はね、ルイ。

俺達の大切なお姫さまなんだ。

とても大切な、ね。

絶対に、手放すことなんてできないよ。

だから、誤らないで。

それより―――、どうして、君はこんなに冷たいんだい?

この夏なのに、体温を感じないなんておかしすぎる」

「………体温を上げないように、しているの」

「水でシャワーを浴びたの?」

「そう。暖かさを感じると、眠くなってしまうから…」

「そうか―――」


 朔也はそっと瑠哀から離れ、その手を掴んで椅子まで戻って来た。


 長椅子に腰を下ろして片足をその上に上げ、瑠哀を見上げながら、その手を優しく引っ張っていく。


「おいで、ルイ。

俺が抱き締めてあげるから、今は眠るんだ。俺達がずっとついているよ。

だから、安心して眠っていいんだ」


 瑠哀は微かに首を振った。

 そんな瑠哀の頬に腕を伸ばし、ピエールが優しくそこにキスをする。


「お休み、ルイ。ゆっくり休むんだよ」
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