瑠哀 ~フランスにて~
「君の方は、大丈夫なのかい?」

「俺は平気だよ」


 朔也も小さな声で話しをし、静かな笑みをみせた。


 もっと自分の熱さを取ってくれればいいのに、と朔也は思っている。

 自分の熱が少し取られたくらい、朔也にとっては何でもないことだった。

 瑠哀が少しでも暖まれば言いのだから。


「本当に、困ったお姫さまだ。

他の女と違う、と言ったけれど、ここまで違っていたら、心配で目を離すことができないよ」


 ピエールが、やや困った、と言う顔をして、瑠哀を見ていた。

 その瞳は、あのいつもの冷たく突き刺さるような感じが全くなく、ピエールにしては珍しく落ち着いた暖かな色を見せていた。


「確かに、そうだね。

全く違っていた。

その違いが魅力的なんだ、と話したのに、それを話した俺自身が、

まさか、ここまで魅力的だとは想像もしていなかった。

俺も、まだまだ、甘いな」

「ルイにそう言ったのか?」


「そう。「変」、じゃなくて、「違う」ということが素適なんだ、と話したんだ。

きちんと判っているつもりだったのに、それがどのくらい素晴らしいものかと言うことは考えてなかった。

あのピエール・フォンテーヌを虜にする女性が存在するなんて、

この頭の隅にさえ浮かんでいなかったものだから」

「虜にされているのは、僕だけなのかな?」

「もちろん、俺もだよ」
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