瑠哀 ~フランスにて~
古臭いホテルの一室に入ると、すぐに向こうのドアがスーッと開いた。
そして、その開いたドアから見える影が―――
「ケイン…!」
瑠哀の緊張が一気に背筋を駆け抜けて行った。
リチャードに匿われていることは承知していた。
必ず、リチャードの元にいることも、承知していた。
だが、実際にあのケインを前にして、瑠哀は凍り付くような寒気を全身に感じていた。
身の危険を感じ、瑠哀の全身が逆毛立つように、
一瞬にしてその緊張と警戒が走り抜けて行ったのだ。
「支度をしろ、ケイン。
この女を連れて来たせいで、すぐにでも手が回る。
今すぐここを出る」
リチャードが口早にそれを言いつけて、スタスタと奥の部屋に進んで行く。
瑠哀はそのリチャードよりも、ドアの側に立っているケインからその目を離すことができなかった。
離してはならないのだ。
離せない。
ケインは動かなかった。
今にも食い尽きそうな貪欲な暗い瞳だけが瑠哀を食い付かんばかりに捕えていて、
自分の獲物を待ち構えたような獰猛な高揚だけがケインの表情から伺える。
その目が上下に動き、まさに獲物に食い付かんばかりのそのギラギラとした欲望で、
瑠哀をおもしろそうに値踏みしている。
――――逃げられない…!
そして、その開いたドアから見える影が―――
「ケイン…!」
瑠哀の緊張が一気に背筋を駆け抜けて行った。
リチャードに匿われていることは承知していた。
必ず、リチャードの元にいることも、承知していた。
だが、実際にあのケインを前にして、瑠哀は凍り付くような寒気を全身に感じていた。
身の危険を感じ、瑠哀の全身が逆毛立つように、
一瞬にしてその緊張と警戒が走り抜けて行ったのだ。
「支度をしろ、ケイン。
この女を連れて来たせいで、すぐにでも手が回る。
今すぐここを出る」
リチャードが口早にそれを言いつけて、スタスタと奥の部屋に進んで行く。
瑠哀はそのリチャードよりも、ドアの側に立っているケインからその目を離すことができなかった。
離してはならないのだ。
離せない。
ケインは動かなかった。
今にも食い尽きそうな貪欲な暗い瞳だけが瑠哀を食い付かんばかりに捕えていて、
自分の獲物を待ち構えたような獰猛な高揚だけがケインの表情から伺える。
その目が上下に動き、まさに獲物に食い付かんばかりのそのギラギラとした欲望で、
瑠哀をおもしろそうに値踏みしている。
――――逃げられない…!